モツぁんと秀三が取っ組合いの喧嘩ですもん、ふふ。……そいで、今日はどうしても、半年分か三月分位は、是が非でもいただいて来いと、お父つぁんが言ったんです。
せい でも、こちらも、どうにも都合が附きませんので、どうか、もう少し――
お光 冗談でしょう、こちらさまなどが五百や六百の金位にあなた、ヘヘ。
柴田 それが君、はずかしい次第じゃが、まるきり余裕がなくてなあ。すまんが――
お光 だってこちらは、大学校の先生でしょ?
柴田 (苦笑)うむ、そりゃまあ――
せい 家や家財が焼けてでもいなければ、もう少しなんとか格好の付けようが有ったでしょうけどねえ、ホントに今の所、なんとしても――
お光 焼けたなあお互いさまですもん。
せい でもねえ――家でも、まだ焼けないで残っていれば、なんですけどさ、お宅のお父さんに建てていただいた家は跡形もなく焼けてしまって、こうしてあなた、遠縁にあたるこんな所の、それもたったこの部屋だけが焼け残ったのを借りて、みんなで住んでいるようなありさまですからねえ。
お光 今更になってそんな言い方ってないじゃありませんか。内のお父つぁんはこちらから請負って家を建てたんだから、
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