Cは無いし、国民は勿論守っちゃいません。守れないのです。つまり全部が闇なんです。全部が闇なのに、俺は闇はしないと言って意地をはっているのは、滑稽じゃありませんか。気ちがいじみていると思うんです。――お怒りになっちゃ困りますが――いや、お怒りになっても、かまいません。
柴田 怒りはしない。……しかしね、清水君。私が休んでいるのは、ホントにそんな事のためではないんだよ。そこまで君たちが言うんだったら、まあ言うがね――早く言えば責任だ。……話が堅苦しくなるがね、私も、まあ、永年、歴史の講義をやっていて、まあ、言って見れば、学者だ。……智識の切り売りばかりしていたわけでもない。多少は、自分の学問的な立場もあるし、又、信念と言ったものも有る。それがこんな事になってしまった。――いやいや、別にそれだからと言って、自分の立場が崩れたとか、又は、スッカリ考え直さなくてはならなくなったと言うのではない。歴史というものを見る見方の根本が変ったりはしないようだ。しかし、……とにかく、今迄の様に高い所から君達に講義が出来なくなった。いろいろ反省して見なければ一言も口が開けなくなった。(せい子が湯をわかすために
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