ッなんぞ有りゃしません。だってあなた、配給がこんなに少いのに、闇の物はお買いにならない。たまったわけのもんじゃないじゃありませんか。私なんぞ、あなた――
柴田 (苦笑)買おうにも、君、金が無いから――
せい いいえ、お金は、たとえ有ってもですよ、先生はそういう主義でもって――
柴田 はは、主義だなんどと、やかましい事じゃないさ。……第一、今にはじまった事ではない。戦争中からズーッと、まあ、同じ事をしているだけで――
せい ですからさ、永い間、栄養がとれていないので、今のようにおなりんなって。それを思うと、ホントに私、泣けて来ます。(言っているそばから、ポロポロ涙を流している)いえ、先生のような方が、いくらなんでも、こんな、あなた――
柴田 いや、おせいさん――すまんが、あんた少しだまっていてくれ。
清水 ――僕、言ってしまいます。先程お話ししました、僕等が先生の事に就て議論した時に、先生の事を馬鹿だと言ったのは、僕です。――だってそうじゃありませんか。配給を当てにしていればわれわれは死んでしまいます。そいで公定価格で何が手に入ります。公定と言うのは名ばかりで、それを決めた政府も守らせる
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