僕には信じられない。君にこの手紙が一度読んで判らなければ、済まないが二度読んでくれ。三度読んでくれ。それでも、判らない所が有ったら、やって来て質問してくれ。僕の思っていることを、少くとも、君に判らせることは、君が思っているよりも非常に非常に大切なことだと僕は思うのだ。
今迄も今後も君が僕の親友であると言う事は暫く言わずともよい。君は、今、日本の演劇文化の持っている最大の良心と最高の技術者の一人だ。殆んど掛けがえの無い俳優だ。君の肩の上には、日本の新しい演劇文化の何分の一かが載っているのだ。そして、その日本は今、どんな位置に立っているのだ? その日本が今、なにごとを遂行しようとしているのだ。
これ以上を言うと冷汗が出るから言わぬ。君が今、力強く立ち上り、堅実に出発し、健全に歩んで行って呉れることは、ソックリそのまま日本の新らしい演劇文化の勝利の一要素であり、日本の新らしい演劇文化の勝利は、ソックリそのまま日本それ自体の勝利の一素困になるのだ。
僕の言い方が大げさ過ぎるならば、笑うがよい。そうで無くても、まるで僕は自分が良心と誠実の卸し問屋のような言い方で、こうして喋り散らして来
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