たことを、きまりの悪いことに思っている。笑うがよい。しかし僕の心にも無い事は言わなかった。きまりの悪さを押し切って言わなければ言えないものだから、言ったまでだ。
世の演劇人の大概は、口癖のように、演劇の仕事では「良心」と「食うこと」は両立しないものの様に語る。それは嘘だ。自己の良心の浅薄を蔽い、非良心的な仕事をするための口実とするための嘘である。「食うこと」の困難にも堪え切れぬような良心は良心の名に値いしない。良心を押し立てることに役立たぬ食うことは、食うに値いしないのだ。
真の良心――即ち国家と演劇芸術の本質に対する忠誠――そのための良き事と悪しき事を弁別するばかりで無く、その良き事のために強く執拗に永続的に挺身しようと言う意志をも含めた忠誠――と「食うこと」は、絶対に両立する! させなければならん! 両立と言うよりは、これが一本になる事だ! 一本にしなければならぬ!
今こそ、われわれは、それの可能を絶対に信じなけれはならない。それを確信することのみが、それを確信し得るように自己を錬成する事のみが、われわれの演劇――われわれの文化――わが国――の最後の勝利をわれわれに確信させる
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