本心」とは助け合って、より高いより堅固なものを生む事が出来る。そして気が附いて見たら、これが僕の「本職の道」であったのだ。
出来ると僕に言えるのは、それを現に僕が実行出来ているからだ。勿論、未だあまり完全な形で実行出来ているとは言いがたい。現にこの三四年位は、そのために、黒字としての収入は一銭も無くなって前借々々で辛うじて食っている。しかしとにかく食っている。だから、もう僕は、うろたえない。又、だから、現にこの三四年は、その昔僕が芸術至上主義的であった頃の様に「純粋」な仕事はしないし、出来ない。しかし辛うじて、とにかく自分の芸術家としての本心に背くような仕事はしないで済んでいる。だから、僕はもう、うろたえない。
勿論、生活の方も劇作の仕事も、スラスラと運んでいるとは言えない。窮迫と不如意と、非才と鈍根に、独り泣くこと、しばしばだ。特に近年、生活と仕事の無理がたたって来て、数日ないしは十数日を病床に徒費しないで過す月は殆んど一ヶ月もなく、人中に出て活動することに全く耐え得ない程に衰えている健康状態なので、「つらいなあ」と思う事が無いと言い切れば嘘になる。しかし、それだけに以前に較べる
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