、女買いをはじめた(即ち、演劇(=女)に惚れた惚れたと言いながら、実はホンの時たまのインギンを通じたいだけの気持で、自身の身体にも自身の財布にも決定的な危険を及ぼさぬ範囲内で芝居をしようと言う者達――即ち君もその一人だ――が現われて来た)。等々々。
 曽ての勘当息子が、これらを見聞きしていれば、心外に思うのは当然であろう。第一、せっかく、チャンとして今後やって行くように取計らってくれた伯父さんに対して済まないのではないかと思うのだ。
 即ち僕は、それらを心外に思う。当局(引いては国家社会)に対しても、それでは済まないのではないかと考える。此の際こそわれわれは、腹のドン底から自戒し自粛して、国家と自己の関係、文化芸術と自己の関係を洗い突きつめ、鍛えて浄めて、国家の子としての誠実と、文化芸術の僕としての良心に徹することに努めた上、文化芸術の事を為すには全身全心の誠を以てこれに当るに非ずんば、過去における過誤を償い得ないばかりでなく、われわれ自身をも遂に真に救い得ないではないかと僕は思うのだ。
 しかも、演劇に対して女買いが女にするのと同じような事をしているその君が、自身のその様な中途半端な
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