事が出来たのだ。もし当局の明断が無ければ、新築地は、生きているか死んだのかハッキリしないような姿で、ダラダラと生き続けていたに違いないのである。切っても切っても生きつづける単細胞動物の様にダラダラと現在までも今後も形の上だけでは「永続」していたに違い無いのだ。こゝに於てか、これを解散させ打破らせた当局の明断は、世間のために幸いなことであった事は言うまでも無い。ばかりで無く新協新築地両劇団のためにも幸いであった。勿論、僕は喜んだ。
此処までの経過を一つのたとえ話にすると、或る一家が在って、その家は既に久しい前から、実質的には没落と言ってよい程の紊乱状態にあった。ただ今までの習慣と惰性とで形の上だけで一家として存在しつづけてはいても、家族達の混乱と放埓はその後も益々紊乱状態をひどくして、それは殆ど収拾のつかぬ程の有様となっていた。しかも此の一族の全体を支配している気分は、それ自体として何等明確なものではなくても、社会にとっては一種有毒な空気を発散していた。
親戚に一人の伯父さんがいて、これを心配した。許して置けなくなった。遂に見るに見かねて、乗り出して来て、この一家の財産整理にかかった
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