った。まして、君の言う「忍耐」にも「聰明」にも当らぬ、むしろ反対に「未練」と「愚昧」に起因する永続であったのだ。僕は、その頃から今に至るまで、この自分の見解を公けの席で公言し、公けの場面に書いて来た。しかし、誰もそれに耳を傾けようとはしなかった。勿論、両劇団はそんな意見に全く耳をかさなかった。僕も遂に言うことに飽きた。両劇団はその後も、あたかも切れ切れなること牛の小便の様にではあるが、同時に、いつ打ち切られると言うことも無い点でも、牛の小便の様にタラタラと続いた。そしてそれは恰も半永久的に続くかに見えていた。そして三年前、両劇団とも当局のすすめに依って、辛うじて打ち切られたのである。
君は「新築地劇団は過去の或る時期に犯した思想上の誤りからその命脈を断ったが、でなくても上述の錯誤(=もともと食える筈の無い劇団が、無理に食おうとして無理をしたこと)から、早晩その永続性を失う運命……解散或はそれに近い大改造を要する運命にあった」と言うが、真実は「命脈を断った」の所までゞあって、「でなくても」以下は全部嘘である。新築地は、幸いにして当局の明断に依って解散させられたからこそ、やっと、つぶれる
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