言う資格も無い。将来とても、これは同様であろう。
だから今此処にこの手紙を書くのも、その辺のことを僕が思い返したためでは無い。僕がこの手紙でどんな事を述べても、それは相変らず無益に近いであろう事も、又、なんら事新らしい言説にも成り得ない事も僕は知っている。それを、しかし、敢えてしようとするのは、第一に、君のムキさに対して何も答えないで済して置くのは失敬だと思ったのと、これを機会に、君の提出している問題をめぐっての僕自身の「告白」をしたい慾望を僕が感じたためである。それに君から公けの場面で話しかけられたのだから、それに対し僕も公けに答える責任が多少は有るわけで、従って幾分「やむを得ざるに発した」ものであるわけだ。
いずれにしろ[#「いずれにしろ」は底本では「いづれにしろ」]、既に「言説」では無い。そのつもりで読んでくれ。失礼な言い方だけれど、ただ言説の範囲内だけで「論理的」に君の意見を叩きつぶして見せる事だけならば、僕にとっては言わば一挙手一投足の労で足る。しかし、その様なことをしても、君にとっても僕にとっても、なんの役にも立たぬ。僕が此処で述べたいのは、僕の――そして多分は君をも含
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