っているとしか僕には、見えないのである。しかも、ショッパナからである。これも、もっと具体的に実証せよとあらば僕はするつもりだ。
 すると僕には、君の「食えないから……」と言う文句から始まって展開された言葉と論理の全過程が、ひっくり返り、こわれてしまったように思われる。言うまでも無く、君にも同様に思われる筈だ。
 従って、あにはからんや! 芸術方針を曲げたり、演目の配列を濁らしたりする原因は、君の言う「食えないのに、無理に食おうとする」からでは無かったのだ。少なくとも、食えないからだけではなかったのである。それごらん。君の手から最後の藁シベを僕は取り上げてあげた。君は、どうする? どう答える?
 そこで、前に別の言葉で言ったように、或る劇団の芸術方針の歪曲や演目の濁りは、他なし、その劇団の芸術的意慾の衰弱から起ると僕は思う。衰弱した芸術的意慾は、ホンの少し痛めつけられても悲鳴をあげるものである。チョットばかり「食えなくなって」さえも、それに堪え切れないのである。
 かつての新築地その他の新劇団はいろいろのやむにやめない原因から、殆んど慢性的に衰弱した状態であった。そして君達の苦楽座は、別
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