る。
 そこで苦楽座の旗挙公演のやられ方(方針)と演目の配列を見ようではないか。
 それはスター・システムでやられた。演目は各スター達の「これは俺の出し物、これは俺の出し物」と言うので決められた。俳優が足りないのは、あれやこれやの雑色の不統一な俳優達が掻き集められた。又は、どう言う理由か僕には判らぬ理由で(なぜなら苦楽座はそれで以て食う必要は無いのだから従って「当てる」必要はないのだから)「大いにポスター・ヴァリューを考慮して」人気だけ有って演技力を殆んど持たぬレヴューガールなどまで掻き集められた。稽古日数は、ひいき目に見ても充分とは言えなかった。三つの演目の間に一貫した方針も調和も統一も無かった。その演目の一つ一つも意義や美しさに於て欠けていた。つまり良くなかった。(この事に就ては、もし君から質問が有れば、良くなかった理由を具体的に述べる事が僕は出来る。また、それだけの責任を自分の言葉に負いたいと思う)
 準備期間が足りなかったとか、脚本が他に無かったからとか言う弁解は、この場合有り得ないのだ。なぜかと言えば、君達にとって食う必要こそ芸術的方針や演目を歪めたり濁らしたりする最大の理由
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