無理に食おうとしたために新築地の針路は曲げられ、濁った。その食えないと言う事にも堪えられなかったし、針路の曲りや濁りにも我慢出来なかったので自分はその様な仕事から身を引いていた。しかし尚、演劇への愛情のやみがたいものを持っている自分達は、今の場合こうするのが最善だと思うので、食う道を別に持ちながら良い仕事をしようと思って苦楽座を結成した」と言う言葉を、そのまま文字通りに真実として肯定して見よう。……さあ丸山定夫よ、水に落ちて溺れようとしている君を救うために僕は一本の藁シベを投げ与える。すがり附きたまえ。やがて直ぐに僕はその藁シベをも君の手から取り上げて見せる。乞う、次を読め。
そこで、苦楽座結成に至る君の論理のすべてを僕は肯定した。あとは、君自身の論理を使って行く。苦楽座は、食うための手段を他に持った者同志の劇団なのだから、差し当り苦楽座自体の仕事の収益で以て食わなくとも済む。従って、その方針や演目の配列は食う必要を顧慮しないで実施出来る。と言うよりは、それが取り柄で苦楽座は始められたのだ。すれば、苦楽座の方針や演目は君等座員達の芸術家としての芸術的意慾を第一義的に具体化したものであ
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