スタア級の俳優に払っているような高額の報酬は払えないであろう。又、それらの劇団は、その成員の一人々々に、ただ時々痙攣的に片手間的に劇団活動に参加することを許しはしないであろう。全幅的に恒常的に永続的に劇団活動をすることを命ずるであろう。
 そうすれば、それらの劇団はその成員全部に、少くとも毎月四十円から百円までの月給なり分配金なりを支給することが出来る。つまり、全員は、食える。勿論、その創立初期に於ては、又時に依って或る時期に於ては、種々の原因から赤字を出すかも知れぬ。しかし、すべての仕事には、時に依って赤字や借金は附随するものだ。赤字や借金の存在が即ち「食えない」と言うことにはならないのである。借金して食って行きながら仕事をして行くことも「食える」内なのだ。理窟ではない。事実として、そうではないか。
 いつでも、そして、いつまでも黒字ばかりでやって行ける事業や運動が世の中に在ると思うか。君の頭の中から、すべての妄想と恐迫観念のクモの巣を払い去って、事実をありのままに見るがよい。

      6

 君は更に、かつての新築地劇団その他を回想して、「食えるときめて割出した人件費を毎月捻
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