円の月収を映画その他から得ている。苦楽座の同人諸氏に至っては大体三百円から千円に至る月収を得ている。それはそれでよい。君達にはそれだけの商品価値が有るのだから、多過ぎるとは言えない。むしろ、それでも足りない位だと思う。
ただ、君達は、いつの間にか、その様な収入に馴れた。それを手一杯に使って暮す暖かさに馴れた。その暖かい席から自分の尻を持ち上げるのが、おっくうになってしまった。しかも、その様な席から「窮乏していた新劇時代」を振返って見ると恐ろしくなる。その時代に別に餓死に近い目に会ったわけでもないのに、恐怖は君達に「食えなかった」などと言ううわごとを言わせるのだ。
しかも、君達の芸術慾や演劇愛は、まだ死滅したわけでは無いので、君達を駆って何かやらせたがる。現在の暖かい席に落着いて居れない。そうかと言って、暖かい席を離れ切りにもなれない。いきおい、その席に坐ったままで、又は半分ばかり坐ったままで、君達の言う「良心的」な「純粋」な芝居を「いじくり」はじめた。それが苦楽座だ。そして、その様な虫の良い自己の態度を自ら弁護するために、この席を離れてしまって全心身を賭して芝居をやれば「食えないか
前へ
次へ
全66ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング