れに全心身を打ち込んでコツコツやって居さへすれば、事実として食える」と言っているのは――その「食える」と言うのは、文字通りの意味で言っている。生活がやって行けるという意味である。富豪のように、重役のように、金利生活者のように、スタアのように、贅沢に暮らせると言う意味ではない。
まして芸術家(ここでは俳優や劇作家のこととする)は、もともと自分の好きな事をしている専門家である。農業者や工員その他に比して、より高い収入や、より贅沢な暮し方を自分の方から要求しようと言うのは間違っている。
君の「まず食わなければならぬ」と言う言葉が、もし贅沢に(即ち日本国民の平均生活費の三倍も四倍もの生活費を使って)暮さなければならぬと言う意味であるならば、先ず君は言葉の使い方を知らないと言わなければならぬし、更にその様な君の考え方は間違っていると言わなければならぬ。
君達は「かつて新劇運動に参加し、それを続けて行くために窮乏の暮しに堪えていた」それが遂に「堪え切れなくなって第一線を離れ糊口の業をするように」なった。そして現在、君達の大部分――と言うよりも殆んど全部が、僕の概算に依れば平均約二百円から三百
前へ
次へ
全66ページ中23ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング