、わが日本は餓えさせないで生かして置いてくれているのだ。勿論、それは先輩知友のすべてに厄介をかけながらだ。現に君からも物質的にも精神的にも助けて貰っている。しかし、その先輩知友も君も、一人残らず「日本」なのだ。いや、それこそ僕にとっての「日本」それ自体なのだ。将来とても、日本は決して僕を餓えさせはしない。その点で僕は全く楽観的だ。
かくの如き僕にして然り。まして、君も徳川夢声も高山徳右衛門も藤原鶏太も八田尚之も、それからそれに類する殆んどすべてのわが兄弟達も、僕より有能であり有徳であり健康であり勤勉であることは間違いが無い。しかも、それらの人人が力を合せて「国のために」なる仕事(演劇)をしようと言うのに、餓える恐れが有る?
僕には信じられない。事実として信じられない。僕がそれを信じるという事は、僕が日本を信じられなくなった時だ。そして僕は日本を信じているのだ。だから丸山定夫よ、馬鹿も休み休み言えと言うことになるのである。馬鹿と言われて腹が立つならば、丸山定夫よ、君の全心身をあげて苦楽座をやった末に、餓死して見せてくれ。
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言うまでも無く僕が「どんな仕事であれ、そ
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