その様な不良少年(青年? 又は中年?)にはなりたく無いと思っているに反して、君が尚も性こりも無く不良青年でありたいと志している点だ。即ち僕が苦楽座ならびにすべての苦楽座的出発点に決定的に反対しているのに反して君は苦楽座の出発点を極力是認し、かつ、すべての苦楽座的道楽演劇を弁護することにヤッキとなっているのだ。
 全体、現在のわが日本は、非常に良い国だよ。神がかりを言っているのでは無い。又、急に「国士」にでもなった気で言っているのでは無い。又、抽象的観念的に「高級」なことを言っているのではない。誰の目にも見える即物的なありのままの事実として僕は言っているのだ。わが日本は良い国だ。見たまえ、わが国民にして極く普通の意味で忠良な人間でさえあれば、上は「演説使い」から、下はシャツのボタン穴をかがるだけの事しか出来ぬ半職人に至るまで、餓えては居ないのである。自分の仕事を、普通の意味でまじめに行っている者ならば、一人として道に餓えて倒れ死んだと言う人は居ないのだ。
 ましていわんや、「今日本が必要としている高い演劇」――言葉を代えて言えば「国家的」「良心的」演劇をやろうとする者をやである。どうして
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