ヴューの半分の挺身もしなかったのだ。それは丁度君が現在「わが日本のために必要な高き演劇」を担うために、実は君の持っている全力量の七分の一か八分の一を出して苦楽座をやろうとしているのに似ている。
それでいて「食えない」と言う。食えないのが当然なのである。君が「食えなかった新劇団」として挙げている新築地のしていたようなやり方――エセ知識階級の持っているあらゆる高慢さとルンペンの持っているあらゆる怠慢さを以て、せいぜい一年に三回か四回の公演、しかもとぎれとぎれの手段と気分を以て行われる演劇活動を以てしては一時不完全にでも食えた方が不思議なのである。「これこれでは食えない」と言いたいのならば、一事を専念に持続的にやって見た上からにしてくれるがよい。懸命にもならないで、「食えない」などとは、片腹痛い言い草である。それはまるで不良少年がホンの時々二三日ずつ、しかも道楽的な方法で正業に従事して見て、その結果「これでは食えない」と言ってその正業そのものをくさすのに等しい。勿論、僕は、他のみを批難しているのでは無い。僕自身も一時その様な不良少年であった。君も亦そうであった。君と僕との違いは、現在、僕は
前へ
次へ
全66ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング