の出来るか出来ぬか判らぬ位に困難な目的である。その様に光輝ある困難な目的に向って発心し発願しながら、君達は、それに向ってなにほどの代償を払おうとしているか? 全心身は勿論、払おうとはしていない。持物の全部を賭けようともしていない。ただ、君達の持物の一部分――その本業である映画その他の仕事で得た金の中から、自分の生活費を差し引いた残りの金の、そのまた一部分と、それから君達の「暇々」と、それから、君達を動かす動力としての善意では無くて君達の装飾品としての「良心」それだけだ。たったそれだけで君達は、この最高至純の目的を手に入れようとしているのだ。それは、先ず[#「先ず」は底本では「先づ」]愚かであり、そして、まちがっている。

      4

「しかし、そうしなければ、食えない。食えなければ、良い仕事を永続的にはやれない。そして永続しない仕事は、結局、良い仕事にはならない。だから、先ず[#「先ず」は底本では「先づ」]食う心配を無くしてから、とりかかるのだ」と君は言っている。
 一応もっともらしく聞こえる。それに、前にも書いたように、君には、君自身の体に叩き込んで来た、「新劇では食えなかった
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