楽にやりはじめようとしている本職俳優なのだ。これを見れば本職演劇人は二重に怒る。僕が君達に対して抱く怒りは、その様な怒りである。それから又、僕が君達の前途に対して抱く心配も亦、その様な心配である。つまり、僕は君達――わが兄弟達に遠からずして血へどを吐いて引きさがらせるような事をさせたく無いのだ。
君は「道楽だと言われてもよい」と言っている。馬鹿を言うな! 君達が「今日本に必要な高い」演劇のために役立ちたいと決心して本気で立ちあがったのが真実であるならば、それが道楽だと言われてよい事があるか! 絶対によく無い! ドロボウもしないのに人から「ドロボウ」と言われてもよいのか? 謙遜と卑屈とは違う。君達は、実は、その様に謙遜らしい卑屈な言辞を以て自分達のシミッタレな根性を蔽いかくし弁解しようとしているに過ぎないのではないか?
今の日本が必要としている高い演劇を創り出し、それに役立とうと言う志は、現在の演劇人にとっては、最高にして至純なる目的である。それは、われわれが自己の持物の一切を放棄し、更に自己の心身の全部をあげて取りかかるのに値いする目的である。しかも、そうしても尚、果して達成する事
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