めるのをきかず、あばれ廻る。その辺に出てゐる物を投げ飛ばしたり蹴つたりして狂態を尽す)へん、住替へがどうしたんだつ! 来い、野郎! ち、畜生! 野郎! ひとで無し! 情知らず! 馬鹿! (あばれ廻る)
より (留吉を発見して)あ、留さん!
志水 留公! 戻つて来たのか?
香代 なんだつて? 又、私の事をひやかすのかつ! 畜生いい加減にしろい! (酔つてチラチラする眼で、その辺を泳ぎ廻つたあげく、留吉の立つてゐる姿を発見する)……なんだい? (顔を突出すやうにして、留吉を見てゐる)
留吉 ……住替へをする事になつたんだつて?
より さうよ。香代ちやんもう直ぐ出立する所なのよ。
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(香代はポカーンと無言で留吉を見詰めて立つてゐるばかり)
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志水 国の方は、どうしたんだ?
留吉 ……うん、百姓したつて、詰らねえ。此処の方がいいや。此処で住むつもりで戻つて来た。済まねえが、又一緒に働かしてくれよ。
志水 そいつはいい! さうか、そりやいい!
留吉 おかみさん、お香代は、いくらで住替へる事になつてんです?
磯 なにか――?
留吉 金高を聞いてゐるんだ
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