ちやん、俺あ留公の事を、からかつて話してゐるんぢや無えぜ。ほかの連中は知らねえ、俺あ――。
香代 あんな奴の事なんぞ、誰が言つたい? 私あ、お前さん達仲間の意気地無さの事を言つてゐるんだ! お前達あ人間の屑だ!
より 香代ちやん――!
志水 アハハハ。いいよ、言はして置けよ。今のところ何と言はれても仕方が無え。(真率に)しかし、なあ香代ちやん、俺達あ、止しやしねえぜ。はたから見てゐると、何もしないでボヤボヤしてゐるやうに見えるかも知れねえけど、実は、そ言つたもんぢや無いさ。
香代 へん、ぢや何故、早く――ぶつぱなしてやらない?
志水 せつかちな事を言つたつて始まらねえよ。明日や明後日おしまひになる仕事をしてゐるんぢや無い。島田のバイ償金だけを倍か三倍かにして取つちまやあ、あとはどうでもいいと言ふ話なら別だが、事はそれだけぢや無え。
香代 そんな事を言つてゐる内に、島田のお婆さんは子供を抱いて明日にでも身投げでもするかも判らないよ、へつ!
志水 ぢやお前は、俺達仲間で、人数は少えけど十人ばかりの家で順繰りに、バイ償金がさがる迄、島田んとこの遺族に毎日炊出しをしてやるやうに決つた事は、知ら
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