。いざとなりや人間、自分の手足だつて叩き売るんだ。俺の女を俺が売るのに何がどうした? お雪に聞いて見ろ、お前なんぞに売られるよりや、俺に売られるのが本望だとよ! 糞でもくらへ!
留吉 ……(無言で利助へ近づいて行き、いきなり相手の首筋と腰を掴んで、投げ飛ばす。不意に人が変つたやうに猛然と怒つてゐる)
利助 な! チ、チ! 野郎、やりやがつたな! (これも起き直つて、留吉へ組み付いて行く)畜生! 野郎! ……この! 畜生!
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(上になり下になりして二人の猛然な取組合ひ、殴り合ひ。……津村と轟が止めようとして周囲をウロウロするが、喧嘩が激し過ぎて傍から手を出す隙がない)
(喧嘩はしばらく続いた末、利助の方が次第に弱つて来る)
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留吉 ……(組敷いた利助を尚も二つ三つ殴つて置いて、その両足を持つて掘割の方へ引きずつて行く)……畜生! 貴様みたいな奴は、俺が殺してやるから、さう思へ! この! さ! (と掘割の水中へ叩き込む。わめきながら這ひ上つて来る利助を、又叩き込む。三度四度五度……)これでもかつ!
津村 留吉君! 留吉君! まあさ、そんな! 危
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