る義理あ無えんだ! ひつこんでろい!
留吉 まあいいから! な! な! 妹が可哀さうなことになる。な、頼む!
利助 可哀さうたあ、誰の事だ? お雪か、へん! お雪なら、俺のカカアだ、お前の妹なんかぢや無え! 可哀さうだつて? なによ言やがる、その可哀さうな奴を、売り飛ばしたなあ、どこのどいつだ?
津村 それを言ふな? そんな君、無茶な、留吉君だつて、何も好んで――。
利助 へん、利いた風な頤を叩くのは止しにしろ!
留吉 ま、いいよ。君あ酔つてるんだから――。
利助 なにを? 酔つてゐると? 大きなお世話だ!(言葉の一つ一つに留吉の肩や額や頬を突きこくる)俺あな、お前から頂戴した酒くらつて酔つてゐるんぢや無えんだ!
留吉 ……(突きまくられてグラグラしながら後ろへさがつて行く。我慢してゐて、全く抵抗しない)
轟 まあさ! 利助君、まあさう君――。
利助 酒位自分の金で買わあ! 金が無くなりや、お雪を叩き売つてやらあ! もともと彼奴あ、貴様に叩き売られた女だ。それを俺が買つてやつたんだ。俺の勝手にしてやるんだい!
留吉 ……利助、それを本気で言ふのか?
利助 本気ならどうした? 本気だとも
前へ 次へ
全93ページ中69ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング