しの金をはたいて、たとへ一株でも二株でも製板の株を買つてよ、それで以てズーツと製板で働いて来た村の連中はどうなるんだ! 五十人からの人間が、そいでどうなるんだ! 製板が倉川の手に渡りや、それがみんな、以前の様に百姓をやつて行かうにもタンボは無し、持つてる株はフイになる、金は無し、食へねえとなりや、よその土地へ流れて行つてウロウロしなきやならねえんだ! なるほど此の俺あ、ゴロツキ山師だ。昔つからのならずもんだ。しかし、お互ひ、人間の道あ、チツトばかり知つてゐるんだぞ!
轟 だつて、こんな事になつて来てゐるのに他人の事ばかりは言つて居れねえよ。
利助 それだつ! 言つたな? そいで売りやがつたな、畜生! ようし、どうするか見ろ! 野郎! (いきり立つて懐中からドキドキ光る鉈《なた》を掴み出す)
轟 あつ!
津村 利助君、あぶないつ! これ!
利助 俺の邪魔すると、どいつも此奴も叩き割つてやるぞ! 出ろつ! (驚ろいてウロウロしてゐた伝七、何かに思ひ付いて急に駈け出して去る)
轟 助けてくれ!
留吉 おい利助、止しな! 利助!
利助 なんだ利助だ? へん、俺あな、お前なんぞから呼び捨てにされ
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