七さんか? こんな所で何をしてゐるんだ? あがつたらいいぢやねえか。
伝七 どうだい、製板の方のゴタゴタは、うまく片附いたのか?
利助 なんだと? それがどうしたんだ! 利いた風な口を叩くのは止しな。君達ドン百姓にわかる事かい! (お雪が奥から出て来る)
津村 倉川の方へスツカリ抵当流れになつて渡つてしまひかけてゐるさうぢやないか? さうなると折角あすこ迄やつて来た君達はどうするんだよ?
利助 それがどうしたんだ? 俺あね、他人のフンドシで角力を取つたりなんぞのケチツ臭え真似はしないんだぞ。なんだい、どいつも此奴も、他人の金に目を附けてウロウロウロと歩きやがつて!
津村 何を云ふんだ、君あ? 私が、いつ――。
利助 俺の云ふ事が気に喰はねえのか、おい! 気に喰はなきや、どうするんだ! (と、津村の肩を掴む)
雪 あんた! あにを――(と土間に飛降りて夫の腕を引き離す)先生、かんにんして下せ、酔つてゐるだから! あんた!
津村 ぢや(留吉に)明日でも又ユツクリ話すから――。
伝七 ぢやま、こんだ、な、留さん――(二人早々に出て行く)
利助 何をしやがるんだ! 離せ、畜生! 離せと言つたら
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