よ、なあ!
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(急に静かになる。短い間)
[#ここで字下げ終わり]
香代 ……(男達に見せてゐた顔とは全く別な寂しい表情)用つて何?
より あんた、お乳をぶつかけたのね、もつたい無い。
香代 フン。……張つて仕様が無いんだもの。店にゐりやさうでも無いけど、此処へ来て、山の方を見てると、張つて来るんだ。
より だから来なきやいいつて言ふのに。
香代 さうさ。……だのに、夕方になると、足が此方へ向いてしまふ。
より ……もうだいぶ大きくなつたらうねえ。私あ、子を持つた事は無いけど、どんなんだらうねえ、あんたの気持。(遠くを指して)あの辺ね、新村つて言ふ所?
香代 いえ、もつと右のさ、そら、あの黒く見える尾根がズーツと裾を引いて、その先がポツンと切れてゐるだらう? あの向ひつ側が新村さ。貧乏な村でね、その家ぢや、三吉の事、本当の子の様に可愛がつて呉れるけどさ、なんしろ家の中に豚が飼つてあるんだから。臭いのなんのつて!
より アハハ。豚をねえ! そいぢや臭いわ。
香代 三吉も、今頃は豚と同じ匂ひになつてるだろ。
より まさかあ! ハハハ。ちやんちやんと、あんたから金が届け
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