――
利助 ぢや貴様一人で行け! 俺あ、骨がシヤリになつても此処でやるんだ。倉川や轟をもう一度見返してやらねえぢや俺あ死にきれねえんだ――
雪 ……だども、さ――。
利助 アゴタ叩くのは止せつ! ムシヤクシヤすらあ。……おゝ、酒を買つて来い。
雪 そんな、朝から飲むの、よしておくれ。身体に悪いから。それに、兄さんも来てんだから。
利助 へん! 兄さんだつて? 彼奴あ、五年前お前をあんな所に叩き売つた奴だぞ!
雪 叩き売つたんぢや無えてば。兄さんにもう一旗あげさせようと思つて、そいで、私の方から望んで――。
利助 同じ事ぢやねえか! 俺があん時一山当てた金でお前を身請けしてゐなかつたら、今頃はお前の身体あ、梅毒かなんかで腐つてゐたんだぞ、此の馬鹿野郎! 今頃ノコノコ帰つて来やあがつて、済まねえが聞いて呆れらあ!
雪 (奥を気にして)あんた、聞こえるから――。
利助 聞こえたつていいぢや無えか、本当の事言つてんだ! グズグズ言はずに、早く酒買つて来い。
雪 だどもさ、山徳ぢや、借りが溜つて、もう掛けではよこさねえのに……。
利助 現金持つて行きや文句無えぢやねえか。
雪 さう、あんた、言う
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