。
辰造 ぢや其処で坐つたまゝ、お辞儀をして見ろ。そしたら利息としてそいだけやらあ。(留吉チヨツと辰造の顔を見て、次にお辞儀をしてから金を懐中にしまふ)アツハハハ! 見ろ! アツハハハ、ハハ!
留吉 (立つて行き、腰掛けに掛けて)……おい、うどんを一つ呉れ。(より子が調理場へ入つて行く)
金助 おい、そろそろ行かうか。
辰造 うん、行かう。志水、行かうぜ。
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(そこへ表から、十二三歳の少年の手を引いた老婆が、あわてゝ入つて来る。二人共恐ろしく汚い、みすぼらしい装をしてゐる。キヨロキヨロと店内を見廻す)
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金助 おゝ、島田のおふくろぢや無えか。まだ公会堂へは行かねえのかい。
婆 いえ、私あ、もう御免をこうむらうと思つてゐるんだよ。ねえ志水さん、もうあんた方いろいろに会社に掛合つて下さるのは止しにして下せえよ。それを言はうと思つて私あ昼間つから、あんたを捜してゐたんだよ。
志水 なんだつて? 止すとは?
婆 いえさ、あんたらが、死んだ伜の事で手当をドツサリ取つてくれようと色々と骨折つて下さるのは有りがたいけどさ、私達のことをダシにして、又段々と
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