香代 アハハ。いいぢや無いの。
金助 えつ! なんだつて! いいんだつて?
香代 いやらしい金さんだねえ。さうぢや無いつてば! そんだけ骨が折れゝば、日当だつていい訳だろと言つてるんだ。
辰造 冗談言つちやいけねえ! これで一日働らいて一両七貫だぜ。お香代さんの前だが一両七貫とは、一円七十銭の事ですよ。今、米がいくらしますかつてんだ。お前んとこの蔦屋で一番安いうどんだつて大盛一つ十銭だぞう! 少し気を附けて口を利いて貰ひてえね。
香代 うどんの値段は、私等のせゐぢや無いわよ、ウフフ。
金助 だつて、なんとなくかう、ふやけて来るんだぜ! それでいいのかい、男児としてだな?
女の声 (町の方から)香代ちやあん! ……香代ちやあん! どこに居るの、香代ちやあん(丘へのぼつて来るより子。香代の朋輩の飲屋の女。着物の裾をまくり上げ、真紅な蹴出しを見せながら)……やつぱり此処だつたよ。おかみさん呼んでるわよ。
香代 なにさ?
辰造 いよう、来た来た! わあ、こいつはたまらねえ!
より あら辰造さんに金ちやんだね。
金助 金ちやんだねか。手軽くおつしやいますねえ。へいさうですよ。私は、いつなんどき首
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