金助の巻ゲートルの始末をしてゐる)……一本附けようか?
留吉 いや、俺あいいよ。後でうどんを食ふから。
志水 留さん、こないだから言つてた話なあ、今夜これから寄合つて相談するんだが、お前も出てくんねえか?
留吉 う?(あいまいに)うん……。
金助 (酒を飲む)そいつは、言ふだけ無駄だあ。
留吉 金返して呉れなきや、ホントに困るよ。
辰造 畜生! (いきなり目の前の燗徳利を留吉目がけて投げつける。燗徳利は留吉の肩をかすめ飛んで二重のハメ板に当つて大きな音を立てて割れる。さすがに皆ドツキリして総立ちになり留吉を見る)ケダモノめ!
志水 おい、辰!
辰造 とめるな! しつこいも程が有らあ! 来い、野郎! (留吉の方へ寄つて行く)
留吉 (眼こそキラキラしてゐるが、態度はおとなしい)……無茶あするなよ。(酒を手の平で拭いてゐる)
辰造 (留吉の襟首を掴んでこづき廻す)さあ、かゝつて来ねえのか、おい! 野郎! こら!
留吉 (抵抗しない)……なにをするんだ?
辰造 この! 畜生! 野郎! (いきなり相手の頬を殴りとばし、続いて腰を蹴とばして、倒れる相手の肩の辺を蹴る)これでもかつ! (と、さすが
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