ふもの。でね、留公にも仲間に入らねえかとすゝめてゐるんだ。
香代 ……駄目でせう、あの人は……。
辰造 へん、そいでゐて、どこの炭坑会社だつて、此の景気で儲かつてゐるんだからなあ。内の会社なんかの株でも今期は一割以上の配当だつて言ふんだ。据ゑつぱなしの儘なのは俺達の日当だけだ。それに三年働いても四年勤続しても臨時工つて言ふ手は無えだらう。そりや、臨時工ばつかりにしときや、首を切るにもアツサリ切れるし、退職手当もチヨツピリで済むし、待遇からすべて、会社にや都合が良いだらうさ。(何かポンポン言ひながら金助(前出)が入つて来る。それを追つて留吉。――二人とも今まで仕事をしてゐたと見えて、汚れて、濡れそぼつた姿。特に留吉の下半身からは未だポタポタ水が垂れてゐる)
金助 なにを言つてやがる! 誰も返さねえとは言つてやしねえぢや無えか! 今日の所は都合が悪いから月末の勘定日まで待つてくれと頼んでゐるのが解らねえのか。全体お前、俺に三円の金を貸すのに、中の五十銭だけは天引きで利息は取つてゐるんぢやないか。そんな因業な事を言ふない!
留吉 だがお前、それを承知で借りたんだよ。俺の方から頼んで借りて貰つ
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