、よからう、誰が聞いても間違ひの無え事を言つてお払ひ箱になりや、此の辰造は本望だ。此処ばかりにてんとさんは照らねえ。
志水 さうなれば、こんだお前も、渡り人足になるんだぜ? それでいいのか?
辰造 あ、さうか! こいつあ、いけねえ。(志水とより子がふき出す)アハハ、渡り人足はまつぴらだ。見ろ、ほれ、あの留だ。不人情と言つたつて仲間つぱづれと言つたつて、あんな人で無しは居るもんぢや無え。此度の話だつて、ほかの連中は腹ん中あとにかく、口先だけでも反対する者あ一人も居ないんだ。だのにあの留吉と来たら、此方の話に返事一つしやがらねえんだ。「俺あチヨツト訳があるから」……かうだ。訳が聞いて呆れるよ! 金が溜めたいだけぢやねえか。ボロツ屑め! 香代ちんも香代ちんだ、いくら好きだと言つたつて、あんな渡りもんのボロツ屑に惚れなくたつていいぢや無えか。しかも片想ひと来てるから念が入つてやがらあ。此の町にや他に男は居ねえのかホントに! どう言ふんだい全体、え、より公?
より 去年の秋、香代ちやんが赤ん坊の事やなんかで変な気になつてゐたとこを、線路の所で留さんに助けて貰つたのがキツカケでせう。
志水 留公が
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