う》を、私はかねて尊重しているが、正直のところ、この人はただ単なるアップ・ツウ・デイトなジャーナリストにすぎないのではないかと思うことが、ときどきある。しかし、そう思いきれもしないで、やっぱり一人の進歩的な愛国者だろうと思ったり。そして、彼の力説する再軍備反対、戦争反対、アメリカ軍事基地化反対などにこちらが賛成して、では、じっさいに、どうすればよいかと考えると、さっぱりわからなくなる。少なくとも、口さきで反対をとなえる以上のことは、何をしてよいかわからない。
 しかも、清水の抵抗論にこちらがいくら賛成していても、たとえば、自分が失業したときにアメリカ軍需品工場に雇われるのが、よいか悪いかを判断するよりどころにはならないだんではない、たとえばアメリカがくれた小麦粉でつくったパンを、食えばよいか食わないがよいか、食うとすればどう思って食えばよいか、などの態度を生みだしてくる頼りにさえもなりにくい。
 それは結局は、清水が自分の主体をさらけ出し、その主体を根こそぎクシザシにした形で、自分は具体的にこのように抵抗するのだといった形で論をおしだしていないからだと思います。少なくともそのような地盤
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