不安をかくしてはならない。また、かくしえない。私は英雄ではありません。卓越個人ではない。あらゆる意味でふつうの人間です。
私の抵抗論はそういう地盤に立っての抵抗論です。
6
これだけを君にわかってもらったうえで、私は私のしようと思っている抵抗を具体的に列記します。
まず、私は何にむかって抵抗するか?
それには、ひろい意味のものと、せまい意味のものがあります。ひろい意味のものとは、政治・経済・言語・文化・教養・習慣・生活様式などのすべての領域にわたって、日本および日本人が拠《よ》ってもって立っている伝統のなかの良きものを、阻害したり腐敗させたり死滅させたり歪めたり侮辱したり植民地化したりする、いっさいの内外の力にたいして抵抗するということです。せまい意味のものとは、ハッキリと目に見える形で日本人の生命や財産や国土を害し、または奪うところの内外の暴力、そのもっとも大きな現われである軍事力の発動にたいして抵抗するということです。
この二つは、同時的に統一的になされます。そして抵抗はあらゆる手段をもってなされるが、ただ一つ暴力による手段だけは、かたく除外される
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