し私において、これは笑いごとでもなければ、感傷でもなければ、過敏でもありません。ごくあたりまえの冷たい思量なのです。現前の自己の条件を一つのハッキリした限界情況として受けとったうえで、それとつなげた形として私の持ちうる具体的実践的なパースペクティヴであって、ほしいままな、または逃避的な想定ではないのです。ですから私は事態がそうなったときにはそうするであろう決心をもっています。
 そう決心をつけたら私は落ちつけました。不安はあります。不安はどこまでいっても、ついてまわるでしょう。しかし根本的なところで安心しました。つまり自分の生活および仕事と、起りうる困難な事態との関係では、私は水中を下へ下へと沈んでいったすえに、私の足は水底の地面にやっととどいたのです。それは貧弱きわまる、一尺四方ぐらいの地面ですが、しっかりした岩でできた地面で、私がその上に立つことはできます。
 立つことができるならば、そこで、もし他からくわえられる力に抵抗しなければならないとならば、抵抗することができるのです。私の足が私を支える力を失ってしまうまで抵抗することができます。
 いまのジャーナリズムや大学などは、生活や
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