多く戦死しつつあり、アメリカ国費の巨大なものが費されている。つまり朝鮮戦争は少なくともアメリカ政府にとっては、へんな言葉ですが、「国是」であります。その国是の出発点を虚偽であり非行だと糾弾《きゅうだん》する方向へむかって書かれたこの本が、その国内で出版され、そして出版者も著者も処罰されない。そのような国がアメリカだということです。その点で私はアメリカを、さまざまのちがったものを持ちながらも、根本的によい国だと思わないわけにはいきません。
 戦争中の日本で、だれかがその本で太平洋戦争を否定し非難したとしたら、どうだったでしょう? また、現在のソビエットで、ソビエットが国として遂行している重大な戦争または事業のことで、その根本的な虚偽と非行を糾弾する本を書いて出版したら、どういうことになるでしょうか? ゾッと寒気が起きるようなことが、関係者一同のうえにおきるような気がします。
 あなたは、そのようなことを一度も考えられたことはないでしょうか? 考えたことがおありでしたら、そのことが、あなたの持っていられるらしいソビエット肯定のお気持と、反米的意見に、どんなふうに作用しているのか、または作用
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