カゃならんとか言いだしてね、そこへ二番目の伜に赤紙が来てな、すっかりどうもカーッとなっちまって。実は例の柳沢金吾君の問題なんぞも、どうもだんだん折合いがつけにくくなって、わしも間に入って困っているんだ。
壮六 実はそのことでやす林さん。わしは轟さんに今逢ってきやして、いや轟さんも、実はこれ以上間に入るわけにもいかねえてなことで、それに、落窪の水田が大方轟さんの持田であるために、あの方の立場もなかなか複雑なようでやしてね。金吾という奴が、ご存じの悪気はねえ奴でがすけど、何しろ一徹でがして。とにかく、こんなことでやっさもっさやってると、今にどんなことが起きるかわかりやせん。この御時世にそれじゃ申し訳がねえので、金吾には俺から、よくそう言って、ちっとは折合いをつけさせようと、そう思いやしてね。実は金吾があすこの山を開拓するについて反対してると言うのが、あの別荘から山林、名儀は金吾のものにずっとなっていやすけどね、本人はやっぱし黒田様から預っている料見でいやすんで。
林 なんせ実行組合の方では、今日明日にでも組合の決議をして、明日が日からでも開墾の鍬入れをしようと息まいているだから、下手をすると力づくの争いが起きかねない。どうもこんなことになるというのが、金吾君が、せっせと百姓をして、ああやって人の手をつけねえ奥地で立派な水田持ちになったのを、黒田さんとの関係が出来たからだと、みんな見るだなあ。羨しがって、焼もち半分に、憎んでいた。そこへこうやって供出々々ということになって、金吾君は黙ってドシドシ割当以上の供出をやるしな。左様さ、どうで金吾君の供出も、落窪の供出全体の率になることだから喜んで居りゃええのに、あふられちゃってハタが迷惑だと思う。どうも人間というものは一筋繩で行かねえものだ。そこへさ、ははは……(淋しく笑って)黒田さんの別荘の、あの春子つう人を金吾君が好きになってるのばなんか怪しからんことのように見るだなあ。黒田の別荘を開墾したくねえという金吾君の気持を、それに引っかけて、取るだ。こいでみんな男と女で、自分達だって折があれば、ひっついたの、惚れたのはれたので、いい加減やらかす癖に、他人のそういう事は、イヤらしく見えるもんだ。そんなことが話がもつれる原因として小さくねえさ、ははははははは。
喜助 (海の口の町はずれの居酒星「杉や」の店の前の縁台で五合ますからジカ
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