げ終わり]
笑い聲もたてないのに
少年が闇の中で
ニッコリしたのがわかる
[#ここから字下げ]
「ヘイブンブンとおんなじだ
しの屋のばさまが言つた」
「ヘイブンブンというのはなんだ?」
「小父さん ヘイブンブンを知らねえか?
夏になるとうちん中や
馬小屋なんぞに
ブンブン飛んでるずら
あやつのことだ」
[#ここで字下げ終わり]
蠅のことだ
少年は笑いもしないでまじめだ
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「ヘイブンブンはな
馬のクソやなんずから
わくんだぞ
俺も 馬のクソかなんかからわいた」
[#ここで字下げ終わり]
わくと言つた
馬のクソから
ウジがわくように
人間がわいた
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「そうやつて暮していて
誰がいちばん君を
可愛がつてくれるの?」
「誰が可愛がつてなんずくれねえよ
俺なんず可愛がつても
なんにもトクしねえからな
おなごしのおよねさんが
時々魚の殘りをくれるが
およねさんは
犬にも魚の骨をやるだからなあ」
「そいで君は父親や母親に
あいたくなることはないのかね?」
[#ここで字下げ終わり]
「ケ ケ ケ!」
と猿のように笑つた
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「一度なあ
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