自分と等質になつて
目や鼻がむやみと涼しい……
[#ここから2字下げ]
「どうした?
ころんだかよ?」
[#ここで字下げ終わり]
少年がふりかえつて
待つている
手を出して助け起そうとはしない
そのような暖かさは
この少年にはない
やがて俺は起き上つた
起き上つたのが
自分か少年か
または全く別の人か
俺にはわからない
少年はなんのこともなかつたように
スタスタと歩き出しながら
また笛を吹きだした
何がおきたのだろう?
歩いている自分が
自分を知つているくせに
俺という人間はコナゴナにこわれて
いなくなつた
俺は知つている
少年の吹く笛の音だけが
三つの音階をでたらめに上下して
そのふるえる音だけが
たしかに通つて行く
道幅が廣くなつたようだ
兩側はからまつの林になり
次第に夜明けが近づくのか
ボンヤリと道が白い
[#ここから2字下げ]
「小父さんは
しの屋に泊らんかよ?」
[#ここで字下げ終わり]
捨吉が笛をとめて
ヒョイと話しかける
その聲にびつくりして
俺はしばらく返事ができない
[#ここから2字下げ]
「君は父親も母親も
わからないのか?」
「わからねえよ」
[#ここで字下
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