クスクスとまた笑つて
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「コヤツにぶつかるのは
これで二度目だ
フフフ
おらあ 目が見えねえからな
うつかりしているとぶつからあ」
「え? 目が見えない?
目が見えないのか?
盲か君は?」
「盲だあねえよ
鳥目だ
夜になると へえ
見えなくならあ
でも朝になつてお日樣がでると
なんでも見えらあ」
「そいじや
今なんにも見えないんだね?」
「だから へえ
ぶちあたつた
フフフ」
「すると
さあつきから
僕の姿も見えないんだね?」
「見えねえよ」
「小さい時からそうなのか?」
「うん 榮養が惡いだと」
「そいで君はあの小屋で
目が見えるようになるまで
待つていたんだな?」
「うん」
「目が見えないのによく歩けるな」
「なれてるだから
平氣だい
うう 腹あへつた
ちつと急がず」
「そうか…………
…………………………」
[#ここで字下げ終わり]
なにか言つたらしい
しかし覺えていない
横づらをひつぱたかれるようにハッとした
目の見えない少年に案内されて
俺は歩いていたのだ

不意にからだの重みがなくなつて
ストンと俺は路上にころんだ
おかしなことがおきた
あたりの闇と
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