!(ピシリと韮山の頬をなぐる)二三日前から、私は、手前の家をはじめとして、妾の家までサンザンお百度を踏んで、追いかけて歩いているんだ。それを、それを、こんな所に逃げ込んで、シャーシャーとして昼寝なんかしていやがって――。
三好 まあまあ、そんな乱暴なことをしなくたって、おだやかに話しをすれば――。
韮山 (なぐられた頬を撫でながら)だれもシャーシャーとなんぞして居らん! 眠うて眠うてならんから、ツイ知らん間に眠っていただけや。
三好 全体、どうしたんですか?
本田 いやね、先程から、もうサンザン話をして、口がすっぱくなる程言っても、この人にゃわからんのですよ。大体、此の男には誠意と言うものが、まるで無い!
三好 誠意か……(朝の内、堀井博士に就て韮山が自分に対して言った事を思い出し、妙な気特になり、ゲッソリして手を引込める。本田と韮山の叩き合いはいつの間にか、やんでいる)
韮山 だから、いくらそんな風に言われても、無い袖は振れんと、先程から、私はこれ程言うてるやないか! 此処の堀井博士が金を返してさえ呉れれば、たかが千や二千、たった今でも返すからと、これ程言うても、あんたが――。
本田
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