好日
三好十郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)銀杏《いちょう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)韮山|正直《まさなお》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「臣+頁」、第4水準2−92−25]
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     1 朝

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 オルゴールの曲。
 室数二十は下るまいと思われる、堂々たる邸宅の、庭に面した二つの座敷。梅雨季の薄曇りの朝。石も樹も格式通りに布置されてサビの附いた庭が、手入れを怠ったため、樹や草の少し伸び過ぎたのがムッと明るい。座敷の、上手の広い室(十五六畳)の縁側近く据えた紫檀の机の前に坐っている三好十郎。机の上には、原稿紙とペン、それから今鳴りわたっているオルゴールしかけの卓上煙草入れ。その辺の調度類とも、まるきり、ふさわしく無い青しょびれた[#「青しょびれた」は底本では「青しよびれた」]風貌で、セルの着物の袖つけの所の大きくほころびたのを着て、痩せた肩を突っぱらしている。煙草をくわえたまま
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