佐田 (それを受取って、ガクンとお辞儀をする)ありがとう。では――(ビッコを引きながら、下手庭口の方へフラフラ歩き出す)
三好 気をつけて……(呼吸を呑んで、縁側に立ったまま、見送っている。佐田のまるで幽霊の様にションボリした後姿が庭口を出て消える)……ああ、えらい目にあった。(額に、にじみ出した油汗を掌で拭く)俺が死ぬ目に逢ってるような気がした。
登美 (レース編みを又始めていたが)三好さんは、馬鹿だわね。
三好 馬鹿? どうして?
登美 馬鹿だから、馬鹿だわよ。鼻の先きで、人に裏切られても、それを知らないで、自分だけ良い気持になっていりゃ、世話は無いわ。そいつは、立派な悪徳よ。
三好 なんの事だ?
登美 今の佐田さん、さっき、私に何をしたと思って?
三好 何をしたんだい?
登美 知らないでしょう? いやな奴!
三好 手出しでもしたのか?
登美 あんな奴、死んだりするもんですか?
三好 ……そうじゃ無い。僕あ、昔、買って貰った靴が自分の足に少し小さいと言うだけの理由で自殺しようとした子供を知ってる。どんな小さい事でも死ねる奴もいるもんだよ。……もしかすると、ホントに死ぬ気だから、最後
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