ら、むやみと自分を通そうとするんです。
浦上 それなんだ。あの人が、もっと大きな作家になれないのも、その性質のためです。もっと人の言う事を聞いて呉れりゃ、いいんだが。一徹と言うよりも、なんか変質的にイコジだから。
轟 近頃、イライラしてるからですよ。人は無類に善良な人ですよ。ハハハ、あんな、良い人は居ませんよ。良い人です。ハハハ。私の「水の上」が、もし、そんな事になれば、キットよろこんで呉れます。
浦上 そりゃ、よろこんで呉れるのが当然ですからね。先輩として……。
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(言っている[#「言っている」は底本では「言つている」]所へ、奥から足音が此方へやって来る。轟と浦上はポツリと話を止めてしまう。……三好入って来る)
[#ここで字下げ終わり]
三好 ……どうも失敬。
轟 どうしました?
三好 ううん、何でも無いんだ。待っている人が、居眠りをしていて、チョット……。
浦上 そいじゃ、お客さんもお有りのようだし、今日は、これで――。(腰を上げて縁側へ)
三好 そう?……すると、じゃ、まあ僕の物は引込めるとして、拝借してある金は、どうしたもんですかね?……今返すと言っても、
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