事は先ずさておいて、第一義的に、あなたの作品と人間からホントの影響を受けたいと思って来ているんですよ。それだけは、わかって貰わないと困るんだ。話の順序でひどく世間的なことや生活の話ばかり気にしているように取れたかも知れませんが、ホントは、あなたにこうして向き合っている時は、そんな事あ、腹に無いんです! 正真正銘、僕には自分の創作の上で、自分の師と思い、兄とたのめる人は、あなただけだと思っています。でなければ、三年以来紹介も無しに訪ねて来て、頼むなどと言えるもんですか。
三好 いやあ、それは――。
轟 そうなんです! あなたがこれまで書いて来た戯曲の前に出せば、現在のあれやこれやの作家のものを寄せ集めてもですね、小田切さんの物など山と積んでもです、なんだと言う気がします。僕はまちがっているかも知れんが、しかし本気で僕がそう思っている事は事実です。そりゃ、うまいとか、まずいとか言やあ、あなたよりうまい劇作家はいくらでも居る。しかし、僕の言っているのは、戯曲と言うものの中に、打込んでいるあなたの全身的な、いやおう無しの、ノッピキのならない精魂の事なんだ。そいつに、取っつかれて惚れ込めば、もう
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