、蛇に見込まれたのと同じで、もうおしまいなんですよ。それを僕は言っているんだ! 第一、あなたに今見捨てられたら僕はどうなります? いやいや、世間的な事や生活の事では無く、仕事のホントの道筋、芸術の本堂にこれから分け入ろうと言うのに、そいつの手がかりが無くなるんだ。そうなったら、僕あ、こうしてやっていても死ぬにも死にきれない! 世渡りの事や生活の事は、そいっちゃなんだけど、世話してくれる人は、捜せば、ほかに有ります。しかし文学の、この、戯曲の正念場で、人間として、僕のぶつかる相手になってくれる人は、日本広しといえども、あなただけしきゃ居ないと僕は思っているんだ。これだけは解って下さい! そして、そんな冷たい事は言わないで下さいよ。僕の量見がまちがっていたら、かんべんして下さい。あやまります!(懸命に言いながら、畳に両手を突いている)
三好 (弱り果てて)いやいや、俺の言っているのは、そんな事じゃ無いんだ。そんな君、あやまるの何のって……。弱るなあ。だから、それなら、それでいいんだから、一緒に[#「一緒に」は底本では「一所に」]勉強して行こう。実あ僕もその方が、うれしいさ。ただ君の方の事情
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