て実在していると言う事実は、君の言う通り、馬鹿には出来んかも知れん。……どうだい、小田切さんに会って見るかね?
轟 小田切喬さん――?
三好 うん。世話好きだと言うしね、実は以前に僕もチョットあの人の家で毎月やっている研究会みたいなもんの仲間に紹介されかかった事がある。僕あ、具合が悪くって参加しなかったけど――。劇作家だけで無く、大島や金井などと言う小説家や、新聞関係や劇団関係の人もいるらしいし、何かと便宜が有るだろうと思うんだよ。なんしろ、あれだけの門戸を張って、勢力の有る人だから――。
轟 しかし、そんな事僕には出来ないなあ。第一、小田切さんの作品にホントに感心した事は僕は一度も無いんだ。だのに、その人の前に手を突いて、今更――。
三好 それを言えば、僕だって同じだ。第一、小田切さんはあれはあれで、偉い人だと僕は思っている。行ったらどうだ?
轟 そんな事言わないで下さいよ。僕は、そんな気持で、此処へ通って来ているんじゃ無いんです。僕あ、何はさて置いても、僕の目の前に居る一番大きな、一番尊敬出来る作家と思って、……早く言やあ、あなたに惚れ込んで、こうして指導して貰っているんだ。ほかの
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