けだ。此処に全部あるんだ。廿四時の地獄だよ。
轟 …………地獄か。
三好 …………(涙を拭いながら)やれやれ、頭がズキズキ痛みやがる。
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(間。……四辺は静かである)
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轟 ……僕も考えて見よう。僕の立っている所など、あんたに較べれば、まだ甘いもんだ。なるほど、対世間的なことなど考えてあせるのは僕など、まだ早い。
三好 (昂奮の過ぎ去った後の静かな調子)いやいや、達うよ。俺が甘っちょろい男だから、こんな大げさな事を考えなきゃならん所に、おっこちるんだ。ばけ物をこわいこわいと思っている臆病な子供が、闇の中から白い物が出て来たのに、ハッと思った怖さの余り、そいつに掴みかかって行くと言った類いだろうな。ハハ、弱虫の証拠だろう。どこまで行ってもリアリストで無い。……世間と言うものはこんなもんだと平たく思って、すなおに順応して行くのが、ホントかも知れんさ。俺だって、心がけだけは、そうしようと思って居る。ただなかなか、そいつがうまく出来ないだけさ。君を非難したいとは思わないと言ったのは、そこの事さ。そんな世間は馬鹿らしいが、その馬鹿らしい世間が厳然とし
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